肛門周囲膿瘍と痔ろうについて

肛門周囲膿瘍・痔ろうとは?

肛門周囲膿瘍とは、細菌感染などをきっかけに、肛門の周囲にできる膿(うみ)の溜まりのことです。膿が自然に出たり、切開により排膿(膿を出す)処置をすると、のちに膿の通り 道が残ることがあります。痔ろうとは、この通り道が固い「トンネル」や「しこり」となったものです。

症状

炎症に伴う発熱のほか、肛門周囲の違和感、痛み、しこり、ジクジクした感じなど、膿瘍・痔ろうの場所や数、大きさなどにより様々な症状が出現します。

原因・病態

肛門周囲膿瘍の原因として一般的には、肛門と直腸の境界にあるくぼみ(肛門陰窩)に開いている肛門腺から細菌が入り、膿が溜まることが多いです。裂肛(切れ痔)、クローン病、結核などが原因となることもあります。また、痔ろうを長年放置すると複雑化して治療が難しくなったり、まれに癌になることもあります。

痔ろうの原因となる穴を原発口、感染を持続させるもとになる部位を原発巣、皮膚開口部を二次口と呼びます。

皮膚に開口部を持たない痔ろうも少なくありません。8 割くらいは「低位筋間痔ろう」といわれる、肛門周囲の比較的浅いところにトンネルができます。

「坐骨直腸窩痔ろう」と呼ばれる、複雑なものもあります。

参考文献:日本大腸肛門病学会ホームページ

治療

肛門周囲膿瘍の場合、炎症所見が軽ければ、抗生物質で治療可能な場合があります。明らかに膿が溜まっている場合は、サイズに関わらず局所麻酔を行い切開排膿が必要です。

膿瘍が大きく深い場合は、ドレーン(排膿を助けるチューブや糸)を留置することがあります。徐々に排液量が減り炎症所見が改善すると、切開創が閉鎖しドレーン抜去も可能となります。処置を行なっても治癒に至らない場合は、痔ろうや他の肛門疾患が隠れていることがあります。

痔ろうに対しては基本的に手術が行われます。当院では入院・腰椎麻酔下にて、主に①切開開放術(レイオープン法)②シートン法を行なっています。

①切開開放術
適応:浅い、単純な痔ろう
  1. 瘻管(トンネル)を電気メス切開し開放します。
  2. 固い瘻管は除去し、切開創がきれいに治るように創縁(傷のふち)を縫合します。

術後、坐薬・軟膏で経過観察します。

②シートン法
適応:深い、単純または複雑な痔ろう
  1. 瘻管を切除(またはくり抜き)ます。
  2. ゴムひもを留置します。
  3. 体が異物(ゴムひも)を押し出していく反応が起こり、ゴムが浅くなってきます。
  4. ゴムひもが脱落すると痔ろうが治ります。

※ ひもが脱落するまで数ヶ月かかります